『電車の中で携帯を触っていた時に言われた言葉に「えっ?」』となった話
まだ二つ折りのガラケーを持っていた頃、
電車の中でメールをチェックしたりしていたら、
じっとこっちを見るおばあさんがいた。
そこは優先座席の側というわけではなかったものの、
電車の中で携帯を触っていること自体が気に障るのかもしれない、
と思って、携帯をそっと閉じた。
そしたら、そのおばあさんが話しかけてきた。
「あんた、スパイやろ」
私は「えっ?」となって、聞き間違いかもしれないし、
聞こえなかったことにした。
そしたらまた、
「あんた、スパイやろ。わかってんねん。私は狙われてるんや。
あんた今、それで何か私の情報を送ったんやろ!」
その時はさすがに「えっ?」どころではなく、
「えぇ~~~っ!!!」となって、
「違います」とか細い声で返答した。
でもその後も、そのおばあさんはずっと、
自分は狙われているという話を、
鋭い目で私を睨みながらブツブツと言い続ける。
私はただただ無になり、窓の外を眺め、ひたすら駅に到着するのを待った。
短い距離だったのに、ものすごく長く感じた。
目的の駅に到着した後、あわてて降りて、そのおばあさんのそばを離れた。
ただ、いつも同じ電車の同じ車両に乗っていたので、
その後も時々、そのおばあさんを見かけた。
でもそのときは、目を合わせないように無になって過ごした。
いつ見かけても一人で乗っていて、
怖い目つきでキョロキョロと周りを見ていた。
スパイがいないかチェックしていたんだと思う。
そして時々、誰かにブツブツ話しかけたりしていた。
今思うと、認知症か、もしくは他の病気だったのかもしれない。
でも、どう対応したらいいのかわからなかった。
ただ、あのおばあさんの世界の中では、
「自分は狙われている」と思って、
周りがみんな敵に見えていたのかもしれないと思うと、複雑な気分になる。
だとしたら、味方とまではいかなくても、
せめて敵ではないと伝えることくらいは、出来たんじゃないか?
と、今さらながら思う。
そうすれば、一人は敵が減るわけだし、
ほんの少しくらいは、おばあさんの気持ちも楽になったかもしれない。
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もっと違った対応をするべきだったのかもしれないですが、
あの時は「怖いおばあさん」という風にしか思えなくて、
ずっと目が合わないようにしてました。
そしてその後、いつの間にか見かけなくなってしまいました。